研究テーマ

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主な研究テーマ

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1.新規抗菌治療薬の開発
従来、製薬企業では、抗菌薬の開発において、試験管内での多段階での試験を経て選別した化合物に対して、治療効果の評価をマウスなどの哺乳動物に対して行っていました。その為、膨大なコストがかかり、しかも効率が低いという問題がありました。弊社では、カイコ幼虫の感染モデルを用いて、治療効果を指標に多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や緑膿菌などの臨床で問題となっている細菌感染症に有効な化合物を探索する新しい技術を開発することに成功しました(文献1、2)。この新しい方法では、対象となる病原菌の増殖を阻害する物質を生産する放線菌やカビなどの培養上清から、カイコ幼虫の感染モデルで治療効果を示す候補化合物を選抜し、有効成分を精製して構造を決定します。最終的には、マウスの感染モデルでの治療有効性を確認し、十分な治療効果が得られ、かつ、新規構造を有する化合物を選別します。すでに弊社では、マウスでの治療効果を示す抗菌治療薬の同定に成功しました。今後、弊社では、この方法により、独自に開発した新規化合物を製薬企業へ販売する予定です。
2.自然免疫促進活性が高い自然食品の開発
自然免疫とは、抗体によらず生体内の異物(細菌・ウイルス・癌細胞)を排除する防御機構であり、昆虫から哺乳類に至るまでの生物が共通して持っています。弊社では自然免疫の活性化に伴い、カイコの筋肉収縮が引き起こされることを発見しています(文献3、4)。この発見を用いて、カイコの筋肉収縮を指標に緑茶や乳酸菌などのから有効成分を分析するシステムを確立しました(文献5)。現在当社はこの系を用いて、自然免疫を高める機能を有する新たな自然食品の開発を試みています。
3.カイコを用いた糖尿病に対して予防効果を示す乳酸菌、自然食品の開発
一般には知られていないことですが、カイコのⅠ型およびⅡ型の糖尿病モデルを構築することができます(文献6、7)。カイコにもボンビキシンというインスリン様のホルモンが存在します。Ⅰ型糖尿病となったカイコにヒトインスリンを投与すると、Aktタンパク質のリン酸化を介したグルコーストランスポーターの発現による血糖値降下がみられます(文献6)。これを利用した糖尿病治療薬の探索が可能です。カイコの人工餌にブドウ糖を添加すると30分以内にカイコの血糖値が上昇し、カイコの成長が停止します。ヒトのインスリンは、高血糖カイコの血糖値を降下させ、成長再開を促します。この系を用いて、インスリン同様の効果を有するⅠ型糖尿病治療薬を探索することが可能です。私たちは生薬の地黄に活性があることを見出しています(文献8)。さらにカイコへのグルコースの投与を1日以上継続すると、カイコはインスリンに効果を示さないⅡ型糖尿病状態となります。メトホルミンなどのヒトのⅡ型糖尿病治療薬が、カイコにおいても血糖降下作用を示します(文献7)。また、カイコの食後高血糖モデルを用いて、ショ糖摂取後の血糖値の上昇を抑制する乳酸菌を探索することができます(文献9)。
4.化合物の毒性・病原性試験法の開発
カイコと哺乳動物では毒物の体重あたりの致死量(LD50)が良く一致します(文献10、11)。一般に食品の毒物の検出には、毒物の種類に応じた物理化学的な手法が用いられますが、従来のこのような方法では全ての毒物検出法を施すことは、未知の毒物が存在する以上、不可能です。そこで、弊社ではカイコをテスターとして用い、農産物や食品、環境から毒物や病原性細菌を検出する方法を開発し、事業化する事を目指しています。
【 文 献 】              
  1. Kaito C, Akimitsu N, Watanabe H, Sekimizu K (2002) Silkworm larvae as an animal model of bacterial infection pathogenic to humans. Microb. Pathog., 32, 183-190.
  2. Hamamoto H, Kurokawa K, Kaito C, Kamura K, Manitra Razanajatovo I, Kusuhara H, Santa T, Sekimizu K (2004) Quantitive evalution of the therapeutic effects of antibiotics using silkworm infected with human pathogenic microorganisms. Antimicrob. Agents Chemother., 48, 774-779.
  3. Ishii K., Hamamoto H., Kamimura M. and Sekimizu K. (2008) Activation of the silkworm cytokine by bacterial and fungal cell wall components via a reactive oxygen species-mechanism, J. Biol. Chem., 283, 2185-2191.
  4. Ishii K., Hamamoto H., Kamimura M., Nakamura Y., Noda H., Imamura K., Mita K. and Sekimizu K.(2010) Insect cytokine paralytic peptide (PP) induces cellular and humoral immune responses in the silkworm Bombyx mori, J. Biol. Chem., 285, 28635-28642.
  5. Nishida S, Ono Y, Sekimizu K (2016) Lactic acid bacteria activating innate immunity improve survival in bacterial infection model of silkworm. Drug Discov Ther. 10(1):49-56.
  6. Matsumoto Y, Sumiya E, Sugita T, Sekimizu K (2011) An invertebrate hyperglycemic model for identification of anti-diabetic drugs. PLoS ONE 6, e18292
  7. Matsumoto Y, Ishii M, Hayashi Y, Miyazaki S, Sugita T, Sumiya E, Sekimizu K (2015) Diabetic silkworms for evaluation of therapeutically effective drugs against type II diabetes. Scientific Reports 29;5:10722.
  8. Matsumoto Y, Sekimizu K (2016) A hyperglycemic silkworm model for evaluating hypoglycemic activity of Rehmanniae Radix, an herbal medicine. Drug Discov Ther. 10(1):14-8. doi: 10.5582/ddt.2016.01016. Epub 2016 Feb 19. Review.
  9. Matsumoto Y, Ishii M, Sekimizu K (2016) An in vivo invertebrate evaluation system for identifying substances that suppress sucrose-induced postprandial hyperglycemia. Sci Rep. May 19;6:26354. doi: 10.1038/srep26354
  10. Hamamoto H, Tonoike A, Narushima K, Horie R, Sekimizu K (2009) Silkworm as a model animal to evaluate drug candidate toxity and metabolism. Comp Biochem Physiol C. 149, 334-9.
  11. Usui K, Nishida S, Sugita T, Ueki T, Matsumoto Y, Okumura H, Sekimizu K (2016) Acute oral toxicity test of chemical compounds in silkworms. Drug Discov Ther. 10(1):57-61.

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